鉛筆や箸が上手に持てない
いい姿勢で授業を受けるのが難しい
両足ジャンプができない
発達障害のある子どもの保護者から上記のような運動面に関する困りを相談されることが多いです。
目に見えやすい「できなさ」に着目をしてスキル獲得に向けて練習をすることは一見、最短ルートを辿って上策のように思えるかもしれません。
しかし、「なんか上手くできない」の背景を正しく理解して深掘りをしていくと身体の発達がまだ発展途上の可能性があります。
今回の記事では身体発達の順序とそのサポートに必要な運動遊びについて紹介していきます。
この記事5秒ハイライト
💡身体発達の順序が理解できる
💡身体発達を促すために重要なことがわかる
💡身体発達を促す運動遊びがわかる
- 【無視できない身体発達の規則性】
- 運動の発達段階
- 体の発達をサポートするために行うこと
- オススメ運動遊び
- 【鬼ごっこ】が子どもたちの発達に及ぼす影響
- ロープ上りの遊具が発達に及ぼす影響
- 運動ができないこどもへの関わり
【無視できない身体発達の規則性】
ここでは人間の体がそもそもどのような順番で発達し、成長していくのかを簡単に解説していきます。
一般的に身体には発達の規則性があります。
- 中心から末端
- 頭部から下部
- 両手から片手
- 粗大から微細
- 全体から部分
この字面だけ見てもイメージがつかない部分もあると思いますのでそれぞれ解説していきます。
中心から末端
体の中心部分(いわゆる体幹)が末端の手先足先よりも先に成熟していきます。
上半身の運動が指先の運動よりも先に発言するのがこの代表例です。
未就学のお子さんでいうと体幹がふにゃふにゃしている時に上手に箸を使いこなすのが難しいのは体の中心部分がまだ成長段階にいる可能性があるからです。
これは誰も難しそうということがイメージできますよね。
児童発達支援の現場では【ハサミ】【えんぴつ】【箸】の練習をしてほしいという希望をいただくことが多いです。
そのようなご依頼があるお子さんは体がふにゃふにゃしてることが多い傾向があります。
そういった場合はいきなり道具の操作を練習するのではなく、中心部分の発達を促すような運動遊びを取り入れてサポートしていったりします。
頭部から下部
眼球運動▶️上半身の運動▶️下半身
と運動の機能が順を追って発現していきます。
赤ちゃんをイメージしていただくとわかりやすいと思います。自立して座るよりも前にママパパを目で追うことができるようになったはずです。
その後に手を動かせるようになって足をバタバタとし始めたのではないでしょうか。
子どもとボール遊びをしていてもサッカーのようにキックするよりも握ったり投げる方が簡単なのは言うまでもないですよね。
おもちゃを握らずにハイハイがスタートしました!っていう人は99%いないはずです。
両手から片手
はじめは両手が連動していたのが利き手で操作できるようになっていきます。
両手でモノを食べたり、紙をちぎるなどの両手を使う活動をしていくと利き手の確立へと発達していくことを意味しています。
児童発達支援の現場でも両利きのお子さんは数名います。右手で作業していても、疲れたら突然左手に持ち替えて作業するということがあります。
発達が成熟していない頃は右手で塗り絵をしていたとしても左手も同じように動かしてしまうことがあります。この段階からたくさんてを動かす活動を通して左右別々の動きができるように発達していきます。
徐々に【右手は箸】【左手はお茶碗をおさえる】のように左右の手が役割分担できるようになっていきます。
粗大から微細
体全体の動きから細かい手先の動きになっていきます。赤ちゃんの手足のような大きな部分に見られる粗大で不器用な運動がしだいに細かい目的に合った動きに発達していくことを表します。
モノを上手に掴めなかった赤ちゃんが徐々に指の動きも細かく動かせるようになっていくことが代表的な例になります。
全体から部分
体全体を動かす遊びから一部を動かす遊びに変化していきます。
年齢を重ねるにつれてボールを追いかけるような遊びから手先を使ったレゴ遊びに進化していくようなイメージです。
まずは身体発達には順序があるということを理解してください。
運動の発達段階
身体全体を大きく動かして活動する項目と手先の細かく動かして活動する項目に注目してみてください。
各年齢ごとにどんなことができていたら良いのか目安がわかります。
ざっくりと解説をすると
0~4ヶ月
- 追視ができるようになる
- ガラガラを握る
- 手足を左右ほぼ同じように動かす
- 縦抱きで頭がぐらつかずに「首が座る」
- 支えて立たせると両足に少し体重をかける
- 両手を合わせた遊ぶ
4~6ヶ月
✅寝返りをする
✅支えなしで座る
✅手で持ってるもので何かを叩く
6ヶ月〜12ヶ月
- ハイハイする
- つかまり立ちをする
- つたい歩きをする
- 親指を使って掴む
1歳
- 上手に歩く
- 階段をのぼる
- 殴り書きをする
- 音楽に合わせて体を動かす
- 片手を支えられて階段を登る
- 積み木を重ねる
2歳
- 両足ジャンプをする
- ボールをキックする
- 絵本のページを1枚ずつめくる
- ボールを上手投げできる
3歳
- 三輪車をこぐ
- 5秒程度片足立ちできる
- 丸を描く
- 人物画を描く
4歳
- でんぐり返しをする
- 片足ケンケンする
- 正方形を書く
- 綱渡り歩きができる
5歳
- スキップをする
- ブランコに立って
- 紐を片結びする
これがすべてではないし個人差もありますが、年齢ごとにこのような成長が見られます。
前項の身体発達の規則性にあります「中心から末端」という発達の流れを踏まえているのもわかるかと思います。
体の発達をサポートするために行うこと
幼児期に身につけたい36の動作があります。
子どもの場合、運動の発達をさせるために筋トレのようなことをする必要はありません。
身体機能の向上は発達を待つか運動遊びをして成長を促すかの2択になります。
「じゃあどんな運動遊びをしたらいいのか」ということでいくつか紹介していきます。
オススメ運動遊び
基本的には全身運動がオススメです。
全身運動ってなんやねんとなると思いますが、全身の筋肉を使った活動なのでただひたすら動き回れる遊びになります。
屋外オススメあそび
- 鬼ごっこ
- ロープ登り
圧倒的にこの2強です!
【鬼ごっこ】が子どもたちの発達に及ぼす影響
鬼ごっこといえば、老若男女誰もが知ってるド定番の遊びですが、実は子どもたちの心身の成長に多様な効果をもたらす、まさに「発達のお宝遊び」です。
鬼ごっこのすごいところを紹介していきます。
1. 運動能力の向上
- 基本的な運動能力の習得
- 走る、跳ぶ、止まる、曲がるなど、様々な動作を経験することで、バランス感覚や敏捷性、協調性などが自然と身につきます。
- 特に、鬼から逃げるために全力で走ることで、持久力や心肺機能も向上します。
- 鬼に捕まらないように、障害物を避けたり、方向を変えたりといった瞬時の判断と行動が求められます。
- 様々な障害物を飛び越えたり、狭い隙間をすり抜けたりする動作は、バランス感覚や空間認識能力も高めてくれます。
基本的な運動能力の向上だけでも十分すごい効果なんですが、それ以外にも副産物が山ほどあります。
2. 思考力・判断力の育成
-
状況に合わせて戦略を立てたり、瞬時に判断を下したりする経験は、問題解決能力や臨機応変な対応力を養います。
-
相手の動きを予測したり、自分の行動を計画したりする思考力が促進されます。
-
ルールを守りながら遊ぶことで、論理的思考や協調性も育まれます。
-
集中力・忍耐力の向上
- 鬼に捕まらないように集中力を高め、最後まで諦めずに逃げ続けることで、忍耐力が養われます。
- 集中力や忍耐力は、学習やスポーツなど、様々な場面で役立つ重要な能力です。
3. 社会性の育成
- 協調性・コミュニケーション能力の向上
- チームで協力して逃げたりすることで、仲間との協調性やコミュニケーション能力が自然と育まれます。
- 仲間と協力して作戦を立てたり、声をかけ合いながら行動することで、チームワークの大切さを学ぶことができます。
- 社会性・ルールを守る
- 勝ち負けだけでなく、相手への思いやりやフェアプレー精神も養われます。
4. 情緒の発達
- 達成感・喜びの経験
- 鬼から逃げ切ったり、達成感や喜びを味わうことができます。
- 達成感や喜びを経験することで、自信や自己肯定感が高まります。
- 負けて悔しい時は、気持ちを切り替えて次こそは勝つという意欲につながります。
- 仲間と協力したり競争したりすることでコミュニケーション能力や自己肯定感も高まります。
5. 創造性・想像力の発達
- 様々な状況に対応する柔軟性
- 状況に応じて、様々な戦略を立てたり、行動を変えることで、柔軟性や適応力が養われます。
- 例えば、鬼が近づいてきたら、隠れたり、方向を変えたり、仲間と協力して逃げたりといった柔軟な対応が必要です。
- 想像力・発想力の向上
- 鬼に捕まらないように、様々なアイデアを考えたり、想像力を働かせることで、創造性や発想力が養われます。
- 例えば、鬼の動きを予測したり、隠れる場所を探したり、仲間と協力して作戦を立てたりといった想像力が必要です。
鬼ごっこのルールも多様にあるので子どもが飽きてきた頃合いを見計らってルールを展開していくと長い時間遊べます。
そしてさらにコストがかからないですよね!
走れる場所さえあれば体一つで準備物は完結します。
鬼ごっこは、子どもたちの心身の成長に多様な効果をもたらす、まさに「発達のお宝遊び」です。安全に配慮しながら、積極的に遊びに取り入れて子どもたちと一緒に、鬼ごっこを楽しんでください^^
ロープ上りの遊具が発達に及ぼす影響
屋外のオススメあそび2つめはロープ上りです。
ロープ上りの遊具は、子どもたちの心身の成長に様々な影響を与えます。ロープ上りのすごさを5つの観点から詳しく解説します!
1. 運動能力の向上
- 基本的な運動能力の習得
- 登る、掴む、ぶら下がるなど、様々な動作を経験することで、バランス感覚や協調性、筋力などが自然と身につきます。
- 特に、ロープを握って体を支えながら登ることで、手指の筋力や握力が強化されます。
- 上手く登るためには、体の使い方を意識し、バランスを取る必要があります。
- 重力に抗いながら姿勢を保つことは前庭感覚を刺激します。
2. 感覚の発達
- 触覚・ 固有受容感覚
- ロープの感触や体の動きを感じることで、触覚や固有覚が発達します。
- これらの感覚は、体のバランスを保ったり、空間を認識したりするのに重要です。
- 前庭覚
- 高い場所で揺れたり、ぶら下がったりすることで、前庭覚が発達します。
- 前庭覚は、平衡感覚や空間認知能力に重要な役割を果たします。
両手両足を均等に身体を使うので体のバランスも整うし、全身運動でありながら腕をたくさん使うので手先の器用さにもつながります。
室内オススメあそび
- 風船をつなげてドライヤー
- バランスドーム
室内ではこれが2強です。
風船を繋げてドライヤーの風でくるくるするやつ
一度はTikTokとかのショート動画で見たことあるのではないでしょうか。
こんなやつ👇
風船を繋げてドライヤーの風でくるくる回すおもちゃは、子供も大人も楽しめる簡単な工作です。これは工作ではなく、家の中でできる全身運動としてオススメです。
まずは作り方を簡単に紹介します。
材料
- 風船:6インチサイズの風船がおすすめ
- テープ:両面テープやセロテープなど
- ドライヤー:冷風モードで使用
作り方
風船を同じ大きさに膨らませます。
風船をテープで繋ぎます輪っか状にする場合は、風船の中心と中心が繋がるように丁寧に貼り付けます。
遊び方
- ドライヤーを冷風モードに設定します。
- 風船の輪っかや列の下からドライヤーの風を当てます。
- 風船が浮き上がったら、ドライヤーの風を調整しながら、くるくる回るようにします。
- 風船トンネルの中を通り抜ける!
🚩ポイント
- 風船を同じ大きさに膨らませると綺麗にくるくる回ります
- テープは重くならないようにできるだけ小さめ
- 風船が破れないようにドライヤーを近づけすぎないように注意
身体機能向上以外の副産物
- 風船をつなげるときに色や数の勉強もできる
- 運動遊びが怖かったとしても視覚刺激になる
特性についてこちらの記事で少し触れています。
風船にぶつからないように体を縮めたり、慎重に跨いだり
自分なりにタイミングを見計らって突っ込むという動作が
家の中でできる安全で楽しく盛り上がれる全身運動の決定版です。
バランスドーム
一般的に児童発達支援事業所や放課後等デイサービスにバランスボールはあるかと思います。
今回紹介するのは【バランスドーム】です。
こんなやつ。
バランスドームは、不安定な表面で遊ぶ遊具です。そのため、子どもたちはバランスをとるために体幹やインナーマッスルを自然と鍛えることができます。
1. 運動能力の発達
これらの筋肉が鍛えられることで、以下のような運動能力が向上します。
- 協調性:体の動きをスムーズに連動させる能力
- 敏捷性:素早く方向転換したり、動きを変えたりする能力
- 平衡感覚:バランスを崩さずに体を支える能力
身体発達の順序のパートで紹介した【中心から末端】の中心部分にアプローチをするようなイメージです。
2. その他
バランスドームは、以下のような効果も期待できます。
- ストレス解消:不安定な表面で遊ぶことで、緊張やストレスが解放される
- コミュニケーション:他者と一緒に遊ぶことで、コミュニケーション能力が向上する
息子も以前はバランスボールに乗っかって手をつないでジャンプしたりゴロゴロとしていましたが、
病気の関係で息子は足が不自由で一人で歩けなくなってしまったので安全性の高く息子の好きな前庭感覚を刺激できるグッズを探してこちらにたどり着きました。
バランスボールが好きだけど、安全面から一人で使わせることを躊躇している方はとってもオススメです!
運動ができないこどもへの関わり
ここまで身体発達の順序や身体発達を促すのに家庭で取り入れやすいオススメの全身運動の紹介をしてきました。
とはいえ、
運動遊びを取れるときに、すべての子どもに対して同じように働きかけたり、同じように 期待したりすることは、非常に難しいです。
それはこどもひとりひとりの現在地が異なるからです。
さらに男女差でも成長の特徴があります。
例えば男子は、走・投・跳のような筋力を伴うものに優れていて、得意としますが、バランス能力やスキップなどの神経支配能力は、女子の方が早く発達する傾向があると言われています。運動能力・運動技能の獲得には、運動経験の差による違いが関係するわけですね。
このように発育発達の進み方は、性差、年齢差、個人差が見られるため、運動指導は、すべての子どもに同じように働きかけたり、同じように期待したりすることは非常に困難と言えます。
障害特性において発達のゆっくりさなどもあります。
そんな状況で運動遊びをすることが目的になってしまわないように子どもに合ったレベルで運動遊びを取り入れて「楽しかった」で終われるようにことが大事です。
今回は身体発達の順序とおすすめの運動遊びについて紹介してきました。
我が子の現在地に合わせて無理のない範囲内で運動遊びを取り入れていきましょう。
この機会に家庭でも子どもとたくさんの運動遊びをして、運動する楽しさを経験させてあげてください!!